●ドラマティックゆうや

2016年、CMディレクターの泉田岳(のちのドラマたけし)は過労によって倒れた病床で窓外の枯れ木をぼんやり見つめながら考えていた。
「自分はこのまま、社会の歯車として生きて行くのだろうか…」

「時計」という器機がある。
1970年ごろまで主流だった動力にゼンマイを使った機械式時計では、様々な歯車が折り重なり正確な時を刻む。
一つでもネジや歯車が欠けてしまっては正確な時は刻めないのだ。
果たして自分という存在は、その歯車の一つになるのか…
表立って見る者に主張する「長針」や「短針」、もしくは「文字盤」になる可能性だってあるんじゃなかろうか…

いやいや何を言っているんだたけし。(舌を出しながら右拳で額を軽く叩く)歯車、裏方、コマ、パズルの1ピース、サラリーマン、素晴らしいじゃないか。
何を不満に思うことがある!
通勤ラッシュの山手線だって何百人というサラリーマン達が折り重なり、それによって正確な痴漢を生むじゃないか。そして歯車(サラリーマン)はDMMで痴漢モノを借りるじゃないか!みんなで一つになって作り上げてるクリエイティブじゃないか!「モノを作る」って素晴らしいじゃないか!
(は●ちゅう、大きく息をしてここでウィンドウを閉じる)

たけしの心に溜まる渦は静まることはなく、窓外の枯れ木は造花だった。
というか外でCMのロケをしていた。美術セットを見て考え事をしていた。
「どこの制作会社だろう…」
よくよく観察してみると、そのCMはスライスオブライフの企画だった。(信用金庫か保険のCMだろうか…)
無理に笑う女子高生役のキャストを見ていられなくなったたけしはベットに戻り実話ナックルズを開いた。
夜になってもCMの撮影は続いていた。
おかしい。スライスオブライフの企画なんてモンはワンシチュエーションにこんな時間をかけるはずはないからだ。もう一度撮影現場を見てみると、通行人役の男がNGを出しまくっていた。
こういう役者が一番ムカつく。エキストラは風景になりきれ。自分を出すな。主役はてめぇの劇団の自主企画でやれ。
幸か不幸か。苛立ちと、ほんの少しの興味がたけしの目を彼に釘付けにしていた。

彼の役は主人公の女子高生の横を電話をしながら通りすぎるサラリーマンだった。
しかし彼はアドリブで女子高生の彼女に道を聞いたり、電話口で部下にキレたりしていた。その度に監督は彼に歩み寄り、ひっぱたいていた。
「もうあの兄ちゃん頬赤いやん、おたふく風邪みたいになってんで」
同じ病室の気胸で入院していた田中さん(のちのドラマゆうや)が歯切れのいいツッコミを入れた。
「やりたいことやってんねんから、まあワシらより偉いけどな…」

歯車、裏方、コマ、パズルの1ピース、サラリーマン、エキストラ、スライスオブライフ、造花の枯れ木、過労と気胸で倒れた二人、病室の時計は21時37分を指す。
21時37分…なんの意味もない時間。そこにドラマがないのが本当のドラマなんじゃなかろうか。
なんの意味もない「今」をドラマに…

「…田中さん。俺、考えてることがあるんです」
拳だけはこの病院にいるどの患者よりも強く握っていたと思う。
「こんな使えない気胸のジジイに、何ができるっちゅうねん…」

「僕…」

その時、病院のある一部の半径10メートル圏内で、
カットとスタートが同時にかかった…


●ドラマティックゆうやとその周辺

「ドラマティックゆうや」を旗揚げた二人は早々に壁にぶち当たる。
「演劇」をやるにはお金がかかるのだ。
舞台の賃料、宣伝美術、プロフィール写真など挙げればきりがないほどお金がかかるのだ。
「なるほど、こりゃあ誰も演劇なんかやらねえわ。」
(ドラマゆうやは「なんか笑けてきたんだよね」と、当時の心境を語っている。)
日本において演劇というものの活動フォーマットはすでに出来上がっていて、演劇文化を築きあげてきた●●●●や●●●●●などの重鎮が事を大きくしすぎたおかげで(ありがとうございます)、末端の小劇団(←演劇パイの大半)は「金かけなあかん」という一種の病気にかかってしまったのだ。

しかし、ドラマたけしには秘策があった。

「友達の美大生」である。
美大出身のドラマたけしはこの頃から同級生や先輩など「友達の美大生」を集め始める。
まず気づかれないように相手に近づき、酒を盛って夢の話をする。
ターゲットが酔ったタイミングで「ドラマティックゆうや」の話を切り出す。
真っ赤な顔した友人達は快く劇団への協力を快諾。しめしめである。
「美大生なぞ、モノを作ろうと志す奴なんてえのは『自己犠牲のネジ』がイカれており、善意でなんでもやってくれんだよ。あいつらは心意気で動く。そこよ。」
マタギみてぇに語るドラマたけし。
そんな狩猟の甲斐あって、
構成作家にアートディレクターの福田哲丸
宣伝美術にグラフィックデザイナー/アートディレクターの一ノ瀬雄太
宣伝写真に写真家の田川優太郎
音響にサウンドエンジニアの鈴木歩積
プロデューサーに浅田義啓
などのメンバーが集まり、「心意気」で不正な時間外労働を強いられている。

多謝。


劇団ドラマティックゆうや

[主演]
ドラマゆうや(田中佑弥)

1987年生まれ 埼玉県出身
身長:183cm 体重:66kg
所属事務所:レトル
2009年日本大学芸術学部演劇学科卒業後、中野成樹+フランケンズに加入。以降すべての作品に出演する。

■主な舞台出演作
2018年 ホリプロ「池袋ウエストゲートパーク SONG&DANCE」(演出:杉原邦生)
2017年 ロロ「父母姉僕弟君」(演出:三浦直之)
2017年 木ノ下歌舞伎「東海道四谷怪談ー通し上演ー」(演出:杉原邦生)
2016年 中野成樹+フランケンズ「華々しき一族」(演出:中野成樹)
2015年 木ノ下歌舞伎「三人吉三」(演出:杉原邦生)
2014年 中野成樹+フランケンズ「天才バカボンのパパなのだ」(演出:中野成樹)
2012年 LFKs「たった一人の中庭」(演出:ジャン・ミッシェル・ブリュイエール)
2011年 KUNIO「エンジェルス・イン・アメリカ 第一部 /第二部」(演出:杉原邦生)
2011年 まつもと市民芸術館『ヨサブロゥ』(演出:串田和美)
2009年 サンプル『あの人の世界』(演出:松井周)

■CM
2017年 乃木坂46 桜井玲香 個人PV「こわい」
2016年 JAL WebCM「JALファイト!フライト!キャンペーン」
2016年 PlayStationVita TVCM「子ども刑事編」
2014年 快速東京×鎮座ドープネス×キリン本搾り

 

[作家・演出・出演]
ドラマたけし(泉田岳)

[構成作家]
福田哲丸

[アートディレクター]
一ノ瀬雄太

[宣伝写真]
田川優太郎

[音響]
鈴木歩積

[大道具]
守田篤史

[プロデューサー]
浅田義啓